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水銀血圧計での血圧測定。

 最近、水銀血圧計が使えなくなるという話をよく耳にします。水銀血圧計とは下の写真左のようなもので、上腕にマンシェットを巻いて動脈の上に聴診器を当てて血圧を測定します。水銀は公害を引き起こす化学物質の一つで、WHOが水銀を使用した血圧計、体温計の全廃を目指すとの声明を発表しました。確かに今は水銀体温計は見なくなりました。水銀血圧計も使用する医師は減ってきていると思います。
 現在は下の写真右のような家庭血圧計(同じくマンシェットを上腕に巻いてマイクが音と振動から血圧を測定します)が普及し、同じ時間に同じ条件で測定した家庭血圧の方が、診察室での血圧より本来の血圧を反映しており、また予後の指標にもなります。昨年の高血圧ガイドラインでも家庭血圧値優先となりました。極端な話、家庭血圧を見せて頂ければその値を参考に薬剤を調節し、診察室で血圧を測る必要もありません。
 確かに水銀血圧計での血圧測定は内科での診察室における慣習的な行為で医学的な意味合いはなくなりつつあるのかもしれません。しかし私は水銀血圧計が使用できる間は、管理に注意しながらこれで血圧を測定していきたいと思います。もちろん家庭血圧値が優先ですが。自動血圧測定では分からないことが、患者さんの腕に聴診器を当てることにより分かる、ということもあると思っています。

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下の血圧(拡張期血圧)が下がりにくい場合。

 家庭血圧を記録してみると、上の血圧はそんなに高くないが下の血圧が高い、或いは血圧のお薬を飲んでいるが下の血圧が下がりにくい、という方は多くみられます。
 上の血圧は収縮期血圧といい、これは心臓が収縮した時の血圧、下の血圧は心臓が拡張した時の動脈圧のことです。太い動脈が硬くなると(イメージとして鉄管)収縮期血圧が上がりますが、拡張期血圧は下がります。高齢の方の多くはこのタイプの高血圧です。逆に若い高血圧の方は太い動脈がまだ固くはなっておらず(イメージとして柔らかいゴムホース)拡張期に血管が血液を貯めこみ圧が下がりずらくなります。血圧の調節メカニズムは複雑ですので他にも多くの因子が絡みますが、大まかにはこの考えでいいと思います。
 若い高血圧の方で収縮期血圧がほぼ135mmHg以下にコントロールされていれば、拡張期血圧が90-100mmHg程度でもそんなに心配することはありません。また拡張期血圧は診察室の水銀血圧計と家庭血圧計では差がみられることも知られています。不明な点はご相談下さい。運動、減量、減塩は拡張期高血圧にも有効ですので継続して下さい。

血圧の季節変動(年内変動)。

 夏になると家庭血圧が下がり、降圧剤を減らせる、或いは減量できるという方は多くみられます。
 血圧には1日の内での変動(日内変動)と同様、1年の中での変動(年内変動)もみられます。もっと細かく言えば週内変動、月内変動も人によってはみられることがあります。
 一言でいえば冬は寒冷刺激で血管が収縮し血圧が上がります。夏は暑い為、血管が広がり、また汗をかき相対的に血管の中のボリュームが減り血圧が下がる、と言えると思います。但し血圧は様々な因子の影響を受けていますので気温はその一部でしかありません。高齢の方は年内変動が比較的はっきりしてる方が多く、若い方はあまり目立たないことが多い印象です。また肥満傾向の方は痩せている方に比べ年内変動は目立ちません。この辺はいくつかの文献と一致しています。
 暑くなり家庭血圧が下がってきていれば、お薬を減らしていきます。高齢の方、合併症のない方は必要以上に下げる必要はありません。但し糖尿病、慢性腎臓病、脳血管心血管の病気をされている方等はしっかりと血圧を下げておく必要があります。正しく測定された家庭血圧は多くの情報を教えてくれます。どの様な因子が血圧に影響を与えているか考えながら血圧手帳を拝見しています。どの因子の影響が大きいかは血圧のお薬を選ぶ際にとても参考になります。

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血圧はどれ位まで下げれば安心か?

 高血圧ガイドライン2014年では、若年、中年、前期高齢者(で糖尿病や腎臓病がない方)の降圧目標は診察室で140/90mmHg未満、家庭血圧で135/85mmHg未満という値となりました。降圧目標とは食事、運動、薬物療法等でこの位まで血圧を下げましょう、これ位まで下げれば安心です、という値です。実は2009年のガイドラインでは降圧目標値は若年、中年者で診察室130/85mmHg、家庭血圧で125/80mmHgという値でした。先の長い若い方は将来の動脈硬化を予防する為よりしっかり血圧を下げようという考えです。私も若い患者さんには家庭血圧目標125/80とお話ししていました。今回目標値がやや緩くなったのは、より低い目標血圧を支持するデータが現時点では乏しいことにあります(この先5年、10年後はどうなるか分かりません)。
 お薬を飲まれ家庭血圧で125/80まで下がっている方でも、下がり過ぎがなければ基本的にはそのままお薬を継続して頂くことが一番安心と考えます。但し上の血圧が100以下が多い、平均でも例えば110-120/程度であれば減量、中止が可能な方もおられます。減量、中止後も家庭血圧測定を継続して頂くことが条件です。患者さんごとに初診時の血圧値、背景、合併症などは異なります。ガイドラインの数値はあくまで目安です。今やるべき事、できる事はしっかりやる、というスタンスで血圧管理を続けたいと思っています。

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家庭血圧測定がとても大切です。

 先日、日本高血圧学会が公表した高血圧治療ガイドライン2014から、前回の2009年ガイドラインから改訂された部分を幾つか記載していきたいと思います。
 一つは家庭血圧が診察室血圧より重要視されたという事です。診察室血圧と家庭血圧に差がある場合は、家庭血圧による診断を優先する、との記載が加えられました。
 家庭血圧は再現性にとても優れています。時間を決めて測定された家庭血圧(朝起床後、排尿後、食前内服前と夜寝る前)は将来の予後推測能に優れていることが以前から多くの大規模臨床試験で証明されています。
 家庭血圧を正しく測定することが大切です。多くの患者さんが家庭血圧を測定されていますが、時に適切でない測定(例えば手首の血圧計を使用、カフの位置、姿勢、測定時間など)をされていると思われる方もおられます。家庭血圧測定は簡単なものですが注意点は幾つかあります。疑問点がありましたらご相談下さい。家庭血圧が135/85mmHg以上は高血圧として対応します。但し高い方が皆すぐお薬が必要なわけではありません。まずは朝、眠前、家庭血圧測定を続けて来院時に見せて頂ければと思います。

 5月となり緑が多くなってきました。
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高血圧ガイドライン2014。

 高血圧ガイドライン2014が公表されました。今はどの世界でもガイドライン一色ですが、そもそもガイドラインとはなんでしょか?ガイドラインとは医療医学の分野では「医療者と患者が特定の臨床状況での適切な診療の意思決定を行うことを助ける目的で系統的に作成された文書」とされています。そしてこのガイドラインはエビデンスをもとに作成されています。医療界もエビデンス一色ですが、エビデンスとは直訳は証拠、例えばある病気に対してこの治療法が効果があることを示す証拠というものです。
 例えば血圧に関していえば、昔はどのような患者さんをどれ位血圧を下げればいいのかははっきりした根拠はありませんでした。しかしここ20年~10年で多くの大規模臨床試験の結果が続々と発表され、これが証拠となり、例えば糖尿病のある高血圧の患者さんはガイドライン上診察室で130/80mmHg以下を目標としよう、ということになります。
 ガイドラインは医師の治療選択を規定するもではありませんが、医師はその内容を十分理解し、基本的にはそれに沿って、さらに個々の患者さんの背景も考慮して診療を進めることになります。
 話がそれましたが、これから高血圧ガイドライン2014の要点、2009からの変更点などを記載していきたいと思います。(待合室にもガイドライン2014を置きましたのでご参照下さい)
 
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冬期、早朝高血圧にご注意下さい。

 ここ数日気温が低く寒い日が続きました。気温が低くなると血圧は上がりやすくなります。朝の家庭血圧が上がってきている方もおられると思います。寒さを感じると自律神経の交感神経(体をプラス方向に調節する神経)が興奮し動脈が収縮し血圧が上昇します。朝目覚め直後、入浴時など「うー寒い」と感じる時は注意が必要です。特にご高齢の方は寒さに対する血管収縮が敏感ですので、朝に暖房のタイマーを利用したり、脱衣所やトイレにも暖房を用意するなど心掛けて下さい。
 
 夏の間、血圧のお薬を減らせていたものの寒くなり血圧が上がりお薬を再開している方が多くなっています。
朝、眠前に測定して頂いた血圧値をみてお薬の調節をしています。家庭血圧測定は多くの情報を患者さん自身と私達に与えてくれます。寒くなり血圧測定がおっくうに感じることもあるかもしれませんが是非血圧測定を続けて下さい。

 12月に入りましたが今のところ風邪や感染性胃腸炎の患者さんは多くありません。昨年の12月初旬は感染性胃腸炎(ノロウィルスなどによる嘔吐下痢症)の方がとても多く、点滴などでとても慌ただしかったのですが、今年は静かです。

 先月末の仙台市感染情報です。仙台市感染症情報
今後、気温が下がり、乾燥すると感染性胃腸炎、インフルエンザとも増えてくると思われます。体調管理に十分注意して下さい。

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アルコールは血圧を上げる?

 適度な飲酒は長生きと関係するといわれています。
いくつかの研究、調査では全くお酒を飲まない人より適当量のお酒を飲む人のほうが死亡率が低いという結果がでています。但し飲みすぎると当然死亡率は上がります。
 ではなぜ飲酒が長生きと関係するのでしょうか?
アルコールは善玉コレステロールを上げる、ストレスに対する血管収縮反応を抑える、インスリン抵抗性を抑える、等の働きで動脈硬化を予防するといわれています。その結果死亡率が下がるものと推測されています。

 飲酒は高血圧にもいいのでしょうか?
ビール大瓶1本、日本酒1合以内、ワイン2杯以内なら悪くないと考えられています。しかしそれ以上となると、交感神経(脈や血圧を上げる自律神経)が活性化し血管が収縮しやすくなり、血圧は上がってしまいます。また大量飲酒に伴うマグネシウムやカルシウム不足も血圧上昇に関係しています。かなりお酒が多かった方がお酒を断ったところ血圧が下がりお薬を減らせたという方が時におられます。このような方は恐らくアルコールに対する血管収縮が敏感なのだと思います。

 お酒が好きな方はビール大瓶1本、日本酒1合以内ではすまないことが多いのではないでしょうか。
おいしくお酒を飲むことは大きな楽しみと思いますが血圧の高い方は飲酒量には十分注意する必要があります。

カリウムを多く摂取する。

 
 減塩を意識するようになり家庭血圧は下がってきたでしょうか?
塩分の多い食べ物を意識して外食時などはなるべく避けるようにする、家庭でも塩や醤油などをなるべく使わず酢や香辛料などを使うよう意識することで少しずつ薄味に慣れていけると思います。

 またカリウムの豊富な物は塩分を排泄する働きがあり高血圧に有効です。カリウムの豊富なものとは簡単に言えば野菜と果物です。
 具体的には
 ●野菜:ほうれん草、トマト、春菊、カボチャ、ニラ、小松菜等。
 ●果物:アボガド、バナナ、リンゴ等。
 ●イモ類:サツマイモ、ジャガイモ等。 
 ●豆類:大豆、納豆、枝豆等。
 ●海藻類:ひじき等。
http://www.eiyoukeisan.com/calorie/nut_list/kalium.html


 これらカリウムの豊富なものを意識的に摂るよう心掛けて下さい。しかし腎臓の働きの弱っている方は摂り過ぎにより血液の中のカリウム濃度が上がり危険なこともありますので注意して下さい。
 
 またカリウムの豊富な食べ物は総じて免疫力をアップさせる食材です。血圧のみでなく疲労回復や風邪予防にも効果が期待できると思います。

食塩摂取6g?

 高血圧の方は医師から「塩分を控えて下さい」とよく言われると思います。先日述べた食塩感受性の有無もありますがすべての高血圧の方は減塩(塩分、食塩を減らす)が必要です。どれ位減らせばいいのか?そもそも自分はどれ位の塩分を摂取しているのか理解されている方は実は少ないかも知れません。我々の説明不足もあるかと思います。
 日本人の平均食塩摂取量は減ってきていますが1日約11~13gといわれています。高血圧学会では高血圧患者さんは食塩摂取量6g以下を奨励しています。いきなり6gは無理かと思いますので、食べ物の食塩含有量を意識して少しずつ薄味に慣れるよう努めて下さい。
 ご自分で調理される方は塩、醤油の量を減らし、代わりにカレー粉、生姜、唐辛子、すだち、等を使い香りや酸味を加えるよう工夫します。ラーメンやそば(特に汁)は塩分がこれだけで5~7gとなってしまいますので食べる機会の多い方は汁は飲まないよう注意します。
 以下を参考に大まかな食塩含有量、摂取量を理解して下さい。
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/seikatu/kouketuatu/meal.html
http://home.c06.itscom.net/maruko/08foods/enbun/enbunhayawakari.html

 また加工食品には裏に成分表示表がありここに食塩相当量が表示されています。食塩相当量の記載がない場合はナトリウム400mgが食塩約1gですのでこれで大まかに食塩量がわかります。日頃から意識してみて下さい。

 血圧が少し高めの方はまず1g程度ずつ減らして8~10g程度に慣れていけば良いと思います。しかし重度な高血圧、また心不全や腎不全等がある方はがっちりと食塩を減らす必要があります。
 おいしいもの(濃い味のもの?)を食べることは大きな楽しみです。そんなに神経質にならず、しかし意識して減塩を試みて下さい。これで家庭血圧が下がってきたらありがたいことです。

 

食塩感受性高血圧とは。

 高血圧に減塩は大切ですが高血圧の方皆さんが減塩さえすれば血圧がきっちり下がるというものでもありません。塩分のみが血圧を規定しているわけではありませんし、また食塩感受性も人により異なります。

 食塩感受性高血圧とは塩分の影響を受けやすい本態性高血圧のことです。塩分を多くとると血管内に水分が多くなり(ホースな中を流れる水の絶対量が多くなるようなイメージです)圧が上がります。食塩感受性が高い方は腎臓で塩の排泄が悪く、またこれに腎臓の交感神経の異常などが関与し、より塩分で血圧が上がり易くなります。

 食塩感受性高血圧は日本人の高血圧の3~4割位といわれています。また高齢、肥満、女性に多いともいわれています。
 家庭血圧をきっちり測定している患者さんである時期塩分摂取が多くて(例えばもらいもので佃煮や塩じゃけなど)この時家庭血圧も上がった。とおっしゃる方は結構おられます。このような方はおそらく食塩感受性が高いのでしょう。
 しかし一般的には食塩感受性の有無を見分けるのは困難です。ですから高血圧の基本は減塩ということになります。高血圧学会では1日の塩分6gを提唱しています。これは実際は難しいでしょう。この辺も記載したいと思います。

塩分はなぜ血圧を上げるのか?


 高血圧には減塩、すなわち塩分を控えることが大切なことはよく知られています。
ではなぜ塩分が血圧をあげるのでしょうか?

 しょっぱいものを多く摂ると(例えばですがラーメンやそばの汁など)喉が渇き水をたくさん飲むから血圧が上がる。などといわれることもありますが、半分当たりで半分はずれでしょうか。

 塩分を多く摂ると血液の中の塩の濃度が上がります。この濃度を一定に保つように水分が血管の中に集まってきます。このように塩分は水を引き寄せます。その結果血管内の血液量、ボリュームが増加するため血圧が上がるといわれています。また塩分は交感神経系を刺激し血管が収縮しさらに血圧を上げる方向に傾きます。

 わかったようでわかりにくい話でしょうか。確かに簡単そうで難しい話です。

 しかし塩分をいくらとっても血圧が上がらない人はたくさんいます。一方で塩分を控えると高い血圧が下がる人もいます。これを食塩感受性といいます。血圧が塩分にどれくらい敏感に反応しているかというものです。

 これも簡単に分かる指標はありません。家庭血圧を測りながら、数日間は思いっきり塩分を摂ってみて血圧があがるか?その後思いっきり塩分を減らしてみて血圧が下がるかでわかります。
(血圧が高い方は時に危険ですので塩分をたくさん摂ることは控えて下さい)

血圧のお薬を飲む前に。

 
 以前お話ししたように高血圧があればその血圧値の程度、他の危険因子などを考慮し今後の方針を決めていきます。すぐにお薬の内服が必要な場合もありますが、多くの方は生活習慣の修正と家庭血圧測定で様子をみることとなります。それでは生活習慣の修正とはなんでしょうか?

 血圧を規定する因子には多くのものがあります。
●血圧を上げる種々のホルモン●自律神経(ストレスなどは自律神経に影響します)  この辺は自分ではどうしようもないところです。
●食塩●体重増加(肥満)●アルコール過剰摂取●喫煙、等々、この辺はご自分で意識できるところです。
これら各々の因子がどの程度血圧に影響するかは人により違います。

 どのような因子がどの程度血圧に影響するか簡単に判断する方法はありません。ですから家庭血圧を測りながら出来ることをまずやってみましょう。

 薬が不要であればそれにこしたことはありません。
一つずつ記載していきたいと思います。


血圧年内変動。夏は血圧のお薬を減らせる?

 朝夕涼しい風が吹くようになりましたが日中はまだまだ陽射しが強く暑い日もあるようです。

 夏場に血圧が下がり血圧のお薬を減らしたり中止できる方は結構おられます。血圧にも年内変動はあるのでしょうか?以前日内変動(血圧は通常朝高く、夜低い)のお話をしましたが、年内変動とは例えば冬高く夏低い、といった1年の内での変動のことです。一般的には冬、気温が下がると血管は収縮しますので血圧は上がり気味となり、夏は気温が高いため血圧は低めになるという傾向はあるようです。しかし個人差、年齢差もありますし血圧は気温だけで変化する訳ではありませんので一般的な傾向と思って下さい。
 血圧のお薬を飲んでいる、特にご高齢の方などは、真夏の暑さで食欲も低下し脱水傾向となり血圧が大きく下がることもあります。ご高齢の方は脳の血圧維持システムが高めにリセットされているため血圧が大きく下がると脳に血液が行きづらくなり危険なこともあります。

 それではどれ位の血圧値となれば減らせるでしょうか?一般的には上の血圧が100~110mmHg以下位でしょうか。しかし患者さん個々の背景、合併症、既往歴、年齢などにより異なります。

 家庭血圧を毎日起床時、眠前と記録していれば下がり過ぎかどうかわかります。
 
 但し夏にお薬を減らせた方も秋から冬にかけて血圧が上昇し、中止したお薬を再開する例が多い傾向です。やはり家庭血圧測定はとても役に立ちます。

血圧のお薬は一生必要?

 高血圧のお薬を飲み始めると一生続ける必要があるから飲みたくない。と思われている方は多いと思います。誰でも一生薬を続けるのは気がすすまないでしょう。
 
 以前述べました本態性高血圧(親から引き継いだ体質+生活習慣などによる)であれば基本的に降圧剤は一生必要でしょう。お薬で血圧を抑えることにより将来の心血管事故を減らすメリットがはっきりしているからです。

 しかし実際は内服開始後、お薬を減量、中止できる方も結構おられます。血圧を上げている原因には多くの因子がありますが、多くの因子のうちどのようなものが主に血圧を上げているかは人により異なります。
 例えば比較的多くみられるのは中年の女性で多くのストレスを抱えている方などです。当初は家庭血圧、診察室の血圧ともかなり高くお薬を開始した方でも、ストレスから解放されて血圧が下がりお薬を減量、中止できる方もおられます。但しその後徐々に再び血圧が高くなることや、各種ストレスにより急に血圧が上がる方もおられますので中止後も注意は必要です。

 大切なことは血圧を下げる目的をしっかり認識し、家庭血圧測定を継続することだと思います。

高血圧の内服治療をいつ開始するか。


 高血圧があれば治療が必要になります。

但し高血圧の方が皆さんすぐお薬の内服を開始する訳ではありません。
高血圧診療ガイドラインでは、先日記載したリスク別に方針が決まっています。

●低リスク群:食事(減塩など)、適度な運動など生活習慣の修正を行い3ヶ月後再評価。140/90mmHgより下がらなければお薬内服開始。
●中リスク群:食事(減塩など)、適度な運動など生活習慣の修正を行い1ヶ月後再評価。140/90mmHgより下がらなければお薬内服開始。
●高リスク群:直ちにお薬による内服治療を開始。

となっています。

 ここで大切なことは糖尿病や慢性腎臓病など高リスク群の方は血圧が130/85mmHg以上なら即お薬の内服を開始し、しっかりと血圧を管理しましょうということです。

 逆に低リスクの方はあまり慌てずにまづ減塩や適度な運動を試みましょうということになります。


 リスク評価は少し複雑ですので主治医にじっくり説明を受けて下さい。


 ガイドラインは絶対的なものではありません。あくまで大まかなものです。患者さん個々で背景は異なります(患者さんの年齢、性格、家庭のご事情、ストレスの程度、等々)ので医師とよく相談し信頼関係を築いておくことが大切と思います。


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高血圧の合併症、危険因子の有無、数。


 高血圧を管理していく上で合併症の有無はとても大切です。

合併症とは、糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病などが同時に存在するか否か、また脳梗塞や心筋梗塞などを既に発症しているか否か、というものです。

これら合併症があるかないかで血圧値の管理目標値も変わってきます。

現在は下記のように血圧の高さと危険因子の種類や数により低リスク、中等リスク、高リスクと分類しています。

一見複雑ですが、危険因子が多いほど、血圧が高いほど高リスクとなります。
但し糖尿病、慢性腎臓病、心血管病があればそれだけで高リスク層となります。

こららの疾患もある方はより血圧をしっかりと下げる必要があることになります。

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高血圧性臓器障害。


 高血圧として管理していく上で高血圧性臓器障害の評価が必要です。

高血圧性臓器障害とは、高血圧による障害が各種臓器にみられるかというものです。

例えば
●眼底検査:眼底の細い動脈を直接観察し高血圧性の変化、動脈硬化性の変化の有無をみます。
●心電図:心電図で高血圧性変化の波形があるかみます(平坦T波、高電位など)。
●尿検査:尿蛋白の有無をみます。蛋白がでていれば腎臓の障害があると考えます。

これらは昔から使われているもので、例えば仙台市の特定検診、基礎検診にも含まれている項目です。

これらに変化が見られれば既に障害が存在しますので、よりしっかりと血圧を下げる必要があります。
変化がなくとも、今後障害が出てこないようにしっかりと血圧を管理していきます。


もっと細かく評価するには
●脳MRI:脳動脈硬化の有無、症状のでない小さな脳梗塞の有無をみます。
●頸動脈エコー:首の動脈を直接観察し動脈硬化の有無をみます。
●心臓超音波検査:心臓の壁の厚さや拡張障害の有無をみます。
●脈波伝達速度:動脈の硬さの評価。
●尿微量蛋白(尿アルブミン):腎障害、動脈硬化の指標となります(保険診療上は糖尿病のみ適応ですが)

等々多くの指標があります。

この辺は高血圧患者さん個々の背景をみて必要に応じて当院もしくは専門施設に紹介し行っています。

特殊な高血圧を除外する。

 家庭血圧を朝、夕と測定し、血圧値はどれ位あったでしょうか?

診察室で何回か血圧を測り、また家庭で朝、夕測定した血圧が基準値を超えていれば高血圧となります。

高血圧には大きく分けて、本態性高血圧と2次性高血圧があります。

●本態性高血圧とは
遺伝的素因があり(ご両親の両方もしくは片方に高血圧がある)、そこに加齢、塩分過多、喫煙、飲み過ぎ、ストレス、体重増加、過労など様々な要因が加わり、40歳前後(30歳~50歳程度と幅はあります)から徐々に血圧が上がってくる高血圧のことをいいます。原因が一つに特定できない(様々な要因が複雑にかみあっている)ので本態性とよんでいます。高血圧の9割はこの本態性高血圧といわれています。

●2次性高血圧とは
腎臓の病気、副腎の病気、腎臓血管の病気、甲状腺の病気など、主に腎臓やホルモンの異常による高血圧を指します。なぜ2次性高血圧の評価が必要かというと、これらの中には手術などで治る高血圧があるからです。

 特に副腎(腎臓の頭側にある親指大の臓器で生きるのに必要な各種ホルモンを作っています)に腫瘍ができ、この腫瘍から血圧を上げるホルモン(アルドステロン、カテコールアミンなど)がたくさん分泌されている場合には手術が必要なこともあります。
これらの病気は非常に希なものとされていましたが、近年アルドステロン産生腺腫による原発性アルドステロン症という病気は実は少なくないことがわかってきました。

 ではどういう場合にこれら副腎性の高血圧を疑うのでしょうか?
以前は、高血圧の家族歴がなく、若くして発症した高血圧で、高血圧性の臓器障害が目立ち、薬剤抵抗性(薬が効きにくい)の場合に疑いました。これは今でも同じと思います。しかしホルモンの値は採血して測定してみないとわかりません。

 基本的に私は初めて高血圧で受診された患者さんには一通りホルモン値(レニン活性とアルドステロン濃度、要すればカテコールアミンなど)の採血測定を行っています。血圧の治療を既に受けている方でも、薬剤抵抗性であったり、臓器障害が目立ったり、なんとなくおかしいかな(この辺は勘のようなものもありますが)と思ったときは採血して評価するようにしています。

 値が正常であればそのまま本態性高血圧として管理していきます。値が異常値であれば(ホルモンは日内リズム、体位、塩分摂取量、ストレスなど多くの因子で値が変動しますので評価は簡単ではないのですが)、時期をみて再検査、やはり疑わしければ精査目的のため専門施設に紹介することとなります。

 これら特殊な高血圧が隠れていないか疑うことは必要ですが、一番大切なことは血圧をきっちりと下げることに変わりはないと思います。

血圧の日内変動。

 
 家庭血圧を朝、寝る前と測定してみると、朝は高めに、寝る前は低めの値になることが多いことに気づかれると思います。

 血圧には日内(にちない)リズムがあります。医学的には概日(がいじつ)リズムともいいます。

 日内リズムとは約24時間周期で変動する生理現象で、例えば常に暗い状況下にあっても約24時間周期を持続するというものです。しかし最近は24時間ではなく25時間で周期していると考えられています。
 朝、太陽の光を見ることにより、目の奥、脳の中の視交叉上核というところで25時間の周期を24時間にリセットしていると考えられています。朝起きて陽の光を浴びることは体内の日内リズムをリセットする意味でも大切なことです。

 血圧は朝高く夜低いというリズムがありますが、例えば昼夜の逆転した夜間に仕事をしている人はどうでしょうか?このような人の血圧は夜間の仕事中に高く、昼間寝ているときに低くなります。すなわち血圧の日内変動は主に活動度(動いているか、寝ているか)に大きく依存しています。

 ではなぜ朝一番、起きたばかりでまだ活動していない早朝の血圧が高いのでしょうか。
これは自律神経や血圧に影響する各種ホルモンが、目覚める前から徐々に上昇するからと考えられています。

 しかし血圧を調節する因子には多くのものがあり、また患者さん個々で要因は様々ですので評価するのは簡単ではありません。

 患者さんの家庭血圧値を拝見し、どのような因子が血圧変動に関与しているのかを考えながら診察しています。これは例えば血圧のお薬を選択する際にもとても大切なこととなります。

 

 
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